ロシアのウクライナ軍事侵攻の即刻停止と撤退を求める

 

安保法制に反対する関西圏大学有志の会(反安関西)

 

石川康宏(神戸女学院大学)、伊地知紀子(大阪市立大学)、岩佐卓也(神戸大学)、岡田直紀(京都大学)、神戸秀彦(関西学院大学)、勝村誠(立命館大学)、木戸衛一(大阪大学)、小山哲(京都大学)、新ヶ江章友(大阪市立大学)、西垣順子(大阪市立大学)、堀雅晴(立命館大学)


 私たちは、日本の安全保障関連法に反対する「安保法制に反対する関西圏大学有志の会(反安関西)」といいます。2015年9月成立の安全保障関連法は、アメリカなど他国が外国で行う軍事行動に、日本の自衛隊が協力し加担することを認めるもので、日本国憲法9条に違反します。関西圏の16大学の有志の大学人が、2015年12月に会を結成し、その後のインターネットなどの情報交換により、現在まで関西圏で講演会・集会を開催するなどの活動をしてきました。

 さて、2022年2月24日、ロシア軍は国境を越えてウクライナに軍事侵攻を開始しました。ロシア軍は首都キエフを含むクライナ全土で、ウクライナの軍事施設のみならず、一般の病院・学校・住宅など民間施設を爆撃し、多数のウクライナ軍兵士とウクライナ市民、さらにロシア軍兵士に死傷者が出ています。国連高等難民弁務官によれば、3月20日には、1000万人をこえるウクライナ市民が、戦火を逃れようと、国内外への避難をしています。これに対して、ロシアのウクライナ侵攻を非難する全世界での世論が強まっています。国連安全保障理事会でのロシア軍の即時撤退決議が否決されたあと、国連総会では、3月2日、ロシアに対して即時・完全・無条件に、ウクライナの領土からロシア軍を撤退させるよう求める決議が、圧倒的多数(賛成141・反対5・棄権35)の賛成をもって採択されました。

 私たちは、ロシアに対して以下のことを求め、また、ロシアに加担しているベラルーシに対しても同じことを求めます。

 

  1. ウクライナはロシア領土に対する攻撃をしていません。それなのに、ロシアがウクライナに軍事侵攻をすることは、不戦条約1条や国連憲章2条が禁止した他国に対する侵略戦争であり、集団的自衛権行使として正当化できるものではありません。ロシアの軍事侵攻は国際法違反であり、ロシアは軍事侵攻を即刻停止し、直ちに撤退するべきです。
  2. ロシアは、2月21日ウクライナ東部の2州(ドネツク州・ルガンスク州)を独立「国家」として承認しましたが、これはウクライナへの内政干渉であり、国連憲章2条などの国際法に反します。ロシアは軍事侵攻を即刻停止し、直ちに撤退するべきです。
  3. ウクライナは、ロシアの侵攻がウクライナにおける「ジェノサイド」を根拠にしているのは虚偽だとして、ロシアを国際司法裁判所に提訴しました。3月16日、国際司法裁判所は、暫定措置命令を出し、ロシアが、ウクライナの領域内で開始した軍事作戦を直ちに停止し、軍事作戦をこれ以上進めないよう求めました。ロシアはこれに従うべきです。
  4. 核兵器は、住民・地域や全世界に甚大で回復困難な被害を生む非人道的兵器です。核保有国が、核兵器を使用することはもちろん、使用の暗示も「核兵器による威嚇」にあたり、核兵器禁止条約や国際司法裁判所の勧告的意見に反します。プーチン大統領は2月24日の演説で核の使用を示唆しました。これは「核兵器による威嚇」であり、許されません。
  5. チェルノブイリ原発の惨劇を繰り返してはなりませんし、そもそも、ロシアも加盟するジュネーブ条約第一追加議定書は、原子力発電所など危険な工作物等への軍事攻撃を禁じています。3月4日、ロシアによるザポリージャ原発の攻撃により火災が発生し、原子力研究施設やチェルノブイリ原発も攻撃・占拠されています。このようなことは許されません。
  6. 一般市民(文民)を攻撃の対象としたり、軍事目標と一般市民(文民)又は民用物を区別せず攻撃することは、ロシアも加盟するジュネーブ条約第一追加議定書により禁止されています。ロシアは、一般の病院・学校・住宅などのウクライナの民間施設を攻撃しており、一般市民に多くの犠牲者が出ています。このようなことは許されません。
  7. ロシア国内では、独立系のテレビ局が放送禁止とされ、ロシアの軍事侵攻に関する報道統制が進められる中で、反戦運動が巻き起こっています。こうした反戦運動への参加者は、ロシア当局により無差別に検挙され、3月20日時点で累計約1万5000人にのぼっている、と報じられています。このようなことは許されません。
  8. 国連憲章2条3項によれば、すべての国連加盟国は、「国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないよう」に「国際紛争を平和的手段によって解決する」義務を負っています。たとえ軍事侵攻中であっても、この義務には変わりはなく、ロシアは、即時に軍事進攻を中止して、紛争の平和的解決に向けて、ウクライナと誠実に交渉するべきです。
  9. ロシアの攻撃を受けた都市・地域では、女性・子ども・障がい者・高齢者・性的マイノリティ、その他の脆弱な立場にあるおびただしい人々が、移動手段・食料・水・薬・救急などへのアクセスに困難が生じたために、国内外に避難しています。ロシアは、避難民に危害を加えてはならず、また、希望地域への避難を確保すべきであり、国際的な人道的支援活動も妨げてはなりません。

2022年3月26日

以上